第19回鵜澤の会公演「松浦佐用姫」を終えて③      ~新たな試み

 面の印象はどうだったでしょうか?
 前シテと後シテの面は違う、と、思って見てくださった方が多かったことは、面白いというより、こちらが考えていた通りのことだったので、本当にそうなら、これも嬉しいことです。あれは、前、後、同じ面でした。「若狭守」と書いてあります(作者名)。銕仙会所蔵の面を銕之丞先生が出してくださり、私も、面の中に、様々な表情を見つけられる面だなこれは、と思って使わせていただきました。
 観世宗家に伝わるこの曲の専用面「小夜姫」と謂われる面が、昭和37年に第25世観世宗家によって復曲される一つのきっかけとなったわけであり、その面がもちろん一番相応しいのだと思います。が・・・? それがないとしたら、それならば、どのような面がこの曲に合うのか? 自分にとっても 曲にとっても・・・。など、未知の事は限りなくありました。装束一つとっても、今回このような経験をすることができて、有難いことでしたし、今後の自分の舞台と対峙した時に様々な形でこの経験が生かされることと思います。最後の所で、海に飛び込んだ後、静かになって、立ち上がり、橋掛かりに行く間の、囃子(大鼓、小鼓のみ)の演奏は今回初めてとり入れたものです。野村四郎氏の御助言によって、三クサリ目を、習いの手、というものにしました。そして地謡は静かに 「はや白々と・・・」と入って来てもらうやり方にしました。その空間というか空気感が良かった、とも言われました。
 協力してくださった地謡の方達、囃子方の方達に感謝しています。また、来年に向けて新たに頑張って参ります。
 来年も舞台を見ていただけたら幸いです。
                                                     鵜澤 久
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